「ドイツサウナ文化の現在を知る旅」エンターテインメント性を求めて さらに進化するドイツサウナ    ヨーロッパバード

「ドイツサウナ文化の現在を知る旅」エンターテインメント性を求めて さらに進化するドイツサウナ ヨーロッパバード

@カールスルーエ, ドイツ karlsruhe, Germany / June, 2016

 

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グーデンタグ! ショウ吉永です。

2016年夏に訪問したドイツの温浴事情、第二回レポートではカールスルーエにある人気のスパ施設「ヨーロッパバード」をご紹介。

よりエンターテインメント性を増した、ヨーロッパバード独自のアウフグースについても詳しくレポートします!

カールスルーへ駅。駅の周辺は宮殿を中心にして放射状に道路が伸びており、格子状道路網を持つマンハイムと並び「ドイツのバロック都市」として有名です。第2次大戦によって甚大な被害を受けた街を再建する際も、放射状道路網を尊重した案が選定されたのだそう。

独立市・カールスルーエについて

ドイツの南西部に位置するカールスルーエ(Karlsruhe)は、バーデン=バーデンと共にバーデン=ヴェルテンブルグ州に属する独立市。人口30万人と州内第2位の人口規模を誇る市です。

ドイツ国内においては、ドイツの連邦憲法裁判所、連邦最高裁判所が置かれる司法首都という役割を果たすと同時に、ライン川につながる運河を活かした工業都市としての側面も持ち合わせています。

ちなみに街の名前の由来は「カールの休息所」。18世紀、この地に居城(宮殿)を移転し、周囲に近代都市を造りあげたカール3世ヴェルヘルムにちなんだものだそうです。

エリアの人気スポット「ヨーロッパバード」

市の南西部にある「ヨーロッパカールスルーへ(Europabad Karlsruhe)」は、市内のスパ・ウェルネス施設の中でも一番人気のスポットです。かんたんに言えば「プール、サウナ、エステなどを楽しめる郊外型スパ施設」なのですが、その楽しさは予想以上!特に注目したいのはプールエリアとサウナエリアです。
プールエリアには、流れるプール、幼児用プール、屋外プールなど穏やかに遊べる施設が集まる他、巨大な浮き輪に座って光の演出付き170mトンネルを猛スピードで滑るチューブスライダーや、急斜面で14mほどの自然落下を楽しめるウォータースライダーなど、エキサイティングなアトラクションも用意されています。

 

そして注目のサウナエリアには、それぞれ室温が異なる(45〜100℃)サウナ室が屋内外合わせて計8室。各サウナ室には「フィンランドサウナ」「ロシアサウナ」といったテーマがあり、中には中世ヨーロッパの歴史や物語をモチーフとした「エクスカリバーサウナ」「ドルイドサウナ」などもあります。また8室のうち6つのサウナ室で、その特性を活かしたアウフグースが行われています。他にも完全予約制のプライベートサウナも用意されているなど、多彩なシチュエーションで楽しめるつくりになっています。

と、様々ある中でいちばん気になったのは「エクスカリバーサウナ」。早速体験することにしました。

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空間とスタッフの力でパワーアップしたアウフグース

さっそく、エクスカリバーサウナで「スペクトラム」というプログラムを体験してみました。(ちなみにドイツのサウナは混浴かつ水着不可なため体験中の写真はありません)

鎧や剣など戦士のモチーフで飾られた入口から中に入ると、室内は鉄十字風プリントの旗があったり、壁に杖を持った男性のイラストがあったりとユニークな造り。さらに部屋の中央には大きな岩を模したサウナストーブが置かれています。ちなみにこのときの室温は55℃。

 

プログラム開始時間になると、入口から女性と全身を黒いローブで覆った騎士が入ってきます。そしてローブの騎士が大きな剣を中央のサウナストーブに差し込み、サウナストーンの上に氷をいくつか並べると、音楽がスタート。そこから2人はアーサー王にまつわる短い物語を演じるのです。ここのサウナストーブは日本では見たことがないくらい巨大なサウナストーブで、サウナストーンに水ではなく氷を使うのも新鮮でした。

BGMがさらにサウナ室内の雰囲気を変えていき、騎士がタオルを振って熱波を飛ばしはじめます。その縦横無尽なタオルの動き、小技の効いたパフォーマンスに室内の利用客は拍手喝采!すると、さらに騎士はタオルを巨大な扇子や大きな旗に持ち替えながら大迫力の熱波を客に送り飛ばします。すべての利用客が充分に熱波を満喫したところでプログラムは終了しました。

 

終了後、騎士役の人に声をかけると、なんと女性であることが発覚!しかもアウフグースに関するサウナマイスター資格を取っているとのこと。とてもホスピタリティが強い女性で、改めてタオルパフォーマンスや利用していた小物を見せてもらったり、ドイツでのアウフグースがいかにみんなで盛り上がれる楽しい時間なのかを教わったりしました。

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長い伝統を持たないからこそ大切なエンターテインメント性

最後に、経営者のオリバーさんから話を伺うことができました。

 

まず、ドイツのサウナ事情について。

「ドイツ人の自宅にシャワーはあるけれど、サウナはありません。サウナはあくまで食事などと合わせて施設で楽しむ娯楽なんです。さらにドイツのサウナは古い伝統などを持たないため、エンターテインメント性が重視されています。だからドイツサウナにはアウフグースが必要なんです!男女混浴というスタイルは、文化が進んでいるため可能なのだと思っています」

 

次に、この施設についても語っていただきました。

「8年前のオープン以来、私たちが目指しているのは《赤ちゃんから老人まで楽しめるエンターテインメント施設》です」
「さまざまな温度のサウナ室があるのは、年齢や体調、病気などで制限のある人にも自分に合ったサウナを見つけて楽しんで欲しいからです」

「ドイツでは、マナーなどの観点から16歳以下をサウナに入れない施設が多いですが、私たちはエクスカリバーサウナのように全年齢を対象としたサウナも用意しています」

利用客のニーズを掘り起こしながら、これまでにない在り方を形にしていく姿勢に頭が下がります。

さらに「ここのロシアサウナは、一度ロシア国内で組み上げたものをわざわざ分解して運び、再び組み上げたもの」「この施設はウェルネススターで四つ星。サウナ設備に関してはドイツのサウナ協会により五つ星として認定されています。今後トリートメントルームをいくつか増やして、ウェルネススターでも五つ星の認定を目指しています。」「私たちは、健康増進星とエンターテインメント性を追求しています。」そんなこぼれ話も。

短い時間ながら、意欲とこだわりを感じさせる話をうかがえました。

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「ないものをつくる」開拓者精神と楽しむチカラ

ヨーロッパバードの素晴らしい点は、そのずば抜けたエンターテインメント性!そして開拓者精神ではないかと思います。

「大人の世界になりがちなサウナを家族で楽しめるものにしたい」「年齢や疾患を理由に諦めずに楽しめるサウナをつくりたい」「もっとサウナでの時間を楽しめるようにしたい」こういった発想は、顧客の潜在ニーズを感じとるマーケティングセンスだけでなく、既存サウナの枠を知り、そこから一步踏み出す開拓者精神があるからこそ。

そして何より、温浴そのものをみずから楽しみ尽くそうとする施設側の姿勢の表れのように思います。

私自身、温浴の楽しみを知ったことが、現在の道を進むきっかけになりました。初心を忘れず、楽しみ続ける中で《最高の温浴》をカタチにし続けていきたいと思います。

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ショウ吉永 Profile

 

福岡県生まれ。株式会社メトス代表取締役。本名・吉永昌一朗。

幼少期にボーイスカウトで自然と人の共存の重要性を学ぶ。航空自衛隊で整備士として働いていた時代、基地内にあるサウナへ同僚達と通ったことが、サウナの魅力を知るきっかけとなった。その後、アパレル業界、照明インテリア業界を経て、メトスへ入社。異色のキャリアならではの発想力と行動力で、日本の温浴文化を活性化させている。全国のサウナにロウリュを定着させるため、旧中山産業(メトスの前身会社)が蓄積していた膨大なノウハウと情報を活用し、「ikiサウナ」や「サウナisness」といったロウリュが可能なサウナヒーター、アウトドアでサウナ浴ができる「テントサウナ」など、これまでにないサウナを日本に広めた。近年は、サウナとエンターテイメントを融合させる「ロウリュ熱波隊」プロジェクトや、サウナヨガなど、サウナの新しい楽しみ方を研究・提唱している。共著に「温泉の百科事典」など。

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ヨーロッパバード・カールスルーへ

Europabad Karlsruhe

 

<住所>Hermann-Veit-Straße 5, 76135 Karlsruhe, Germany
<TEL> +49 721 16022400
<アクセス> カールスルーへ駅から徒歩約20分, トラム利用なら約5分
<URL> http://www.ka-europabad.de/home.html (ドイツ語)