サウナ愛の高じたフィンランド人が"熱狂"する移動式サウナフェスティバルに潜入!
今夏の日本の猛暑といったら、まさにどこを歩いていても天然サウナだと、こちらフィンランドまで噂が届いております…。かたや2015年のフィンランドは、50年ぶりの冷夏と言われる少し残念な夏。本来一番気温が上がって気候も晴れ続きとなるはずの7月がどんよりしたお天気ばかりで、日中もほとんど長袖を着て過ごしていました。このままTシャツに袖を通すこともないまま秋そして冬を迎えることになったらどうしよう…とフィンランド人達も戦々恐々としていましたが、幸い8月に入ってようやく気温が20度台に上がる日が増えてきたので、このまま晩夏は穏やかに北欧の夏らしさを感じていられたらと誰もが祈り続けているようなムードです。
さて今日は、去る8月1日にフィンランドのテウヴァ(Teuva)という街の郊外にあるキャンプサイトを舞台に繰り広げられた、奇妙奇天烈な国内最大の移動式サウナ・イベントの訪問レポートをお届けしたいと思います。テウヴァは、南ポホヤンマー県というフィンランド中西部のエリアに位置する、人口5000人あまりの小さな街。このエリアの景観は、いわゆる「森と湖の国」というフィンランドの典型的なイメージとは少し異なり、湖は殆どない代わりに、どこまでも先が見えてしまうようなまっ平らの大地(農地)が延々と続いています。ちなみにフィンランド人が抱いているこのエリア出身者の「県民性」といえば、寡黙でちょっとぶっきらぼうだけど、仕事熱心で腰強、そして郷土愛強し!サウナだったらとびきり熱いサウナのなかで最後までじっと耐えていそうなイメージだそうです(笑)
サウナは旅先にも「持って行く」時代!? 自慢のセルフメイド移動式サウナが大集結
そんなテウヴァの街でこの移動式サウナ・フェスティバル(Teuvan Sauna-ajot)が開催されるのは、今年でなんと10回め。 でもそもそも「移動式サウナ」と聞いても、果たしてどんなサウナのことかピンと来ない人も多いでしょう。 移動式サウナとは、車が牽引できるトレーラーや、車そのものに薪焚きサウナストーブとベンチと煙突を取り付けてしまった、文字通りどこにでも移動可能な「サウナ付き改造車」のこと。泊まりこみで楽しむ音楽フェスや、キャンプ、ロードトリップ、ちょっとした日帰りドライブ先でもサウナ浴だけは欠かせない…というもはや中毒的なサウナ愛に溺れるフィンランド人たちが生み出した、究極のサウナ形態と言えます。
サウナは見て楽しむものではない。見物客は水着持参でロウリュを実体験!
このフェスティバルには、毎年全国各地から、我こそはというセルフメイド移動式サウナの制作者・所有者が自慢の愛車とともに大集結します。 そしてそれぞれに趣向を凝らしたビジュアルを見せびらかすだけでなく、なんと実際に見物客がそれぞれのサウナを体験できるように終日開放してしまうのが、イベント最大の特徴といえます! 電気のない場所で使うことを想定されているため、搭載されたストーブは薪炊きスタイルが主流。主催者が、サイト内に薪の提供スポットやロウリュ用の給水所を設けてくれています。というわけでもちろん、見物客たちも水着とバスタオルは持参必須ですよ。小さな沼の岸辺でのイベントなので、サウナ後恒例の冷水ダイブ先もご心配なく。さあ、今年はどんな移動式サウナが集まってきたのでしょうか…目と汗を奪われたユニークサウナをいくつかご紹介しましょう!
他にも、農機具や大型バスを改造したものから、サウナだけでなく簡易寝床もついた移動式コテージと呼べるものまで、実に多種多様。外観部分の出来栄えは、商品化してもおかしくないようなアイデアと高度な技術に支えられたサウナもあれば、やや入室をややためらってしまう文化祭の出し物レベルのサウナも見受けられますが、特筆すべきは、これらの移動式サウナの制作者のほとんどは、サウナ造りの専門家でも大工でもなく、あくまで本業が別にあるアマチュアたちばかりであるということ。ビジュアルのクオリティにはやや差がありますが、いずれも密閉空間で火を炊く上での安全性がきちんと保証され、法律的にも道路運送車両の保安基準をクリアした合法的な改造車やトレーラーなのです。
制作者たちが語るエピソードや制作秘話もまた感慨深し!!
とはいえ、とりわけ車自体をサウナに改造してしまったタイプの場合、車検時のチェックの目はあれこれ厳しいようで、例えば上で紹介した消防車の改造車の場合、もともとついていた点灯サイレンは外しなさいと注意されたそう。制作者はしょうがなくサイレンを取り除いた場所に、お風呂で浮かべるアヒルのおもちゃを取り付けてしのぐことにしたのだとか。
また、今年は事前登録では計60台の移動式サウナが集結する予定になっていましたが、当日現地に到着していたのは59台。後日のニュース報道によると、来るはずだった残りの一台は、出発前日にオーナーの親戚が利用中にボヤ騒ぎを起こし、焦ったその親戚が湖の中に牽引して沈めてしまったのだとか…!!オーナーはサウナを持たずにイベント会場には顔を出していたようですが、「あんなにいいロウリュを生み出すサウナは他になかったのに…」と、 がっくり肩を落としていたそうです…嗚呼無念。
サウナの出来栄えだけでなく、制作者たちの制作秘話やエピソードに至るまで、話題に事欠かないイベントですが、ともあれそうした異例のサウナ作りを仕事の片手間で成し遂げられるのは、フィンランド人の度を越えたサウナ愛に加えて、彼らがこの国で伝統的に受け継いできた、類まれなセルフメイド精神と技術があってこそ、と言えるかもしれません。フィンランドでは、家のちょっとしたリフォームや修理、家具づくりなどは自分たちの手でやってあたりまえ。義務教育時代からかなり実践的に教わる土木技術の知識や経験をベースに、さらに自分で本を読んで勉強したりプロにアドバイスを受けながら、自宅やサマーコテージを自ら建造してしまう人だっているのです。
また、フェスらしく会場では軽食屋台も並んでおり、サイトの中央にはイベントステージも設置されていて民族音楽のライブや道化師のパフォーマンスも繰り広げられています。さらに時間によってユニークなミニイベントもいろいろと用意されていて、中でも異様な盛り上がりを見せていたのが、 サウナの必須グッズ「ヴィヒタ(白樺の葉束)」投げ選手権!!ちゃんと男女や年齢枠別になっていて、より遠くまでヴィヒタを投げた人が表彰されるという、部外者は首をかしげてしまうヘンテコイベントでした…
ともあれ訪問客もまた、同室でロウリュを楽しむ人や制作者との会話を楽しみながら、ひとつひとつのサウナの出来栄えを肌で確かめてしっかり品評。夏休み中の週末イベントなのでやはり家族連れが多く、大人たちはビール片手に、子どもたちは水やジュースを持って、オリエンテーリングのように和気あいあいと千差万別のロウリュを楽しんでいる光景はなんとも平和的で、フィンランド人のサウナ愛をひしひしと感じ取れるものでした。10回記念を迎えたところで、残念ながら来年は1回「休催年」を挟むのだそう。再来年にまた、時流に乗った、いやさらに越えた新たな移動式サウナにお目にかかれるのを楽しみにしておきましょう!
■Teuvan Sauna-ajot 公式ホームページ(英語)
http://sauna-ajot.com/index.php/in-english
※今年のエントリーサウナは以下のページからすべて見ることができます!
http://sauna-ajot.com/images/Sauna-ajot%202015%20saunalista%20NETTI.pdf