炎の魅力
テンプテーション・アイランド=「誘惑の島」というアメリカのテレビ番組がある。恋人たちが別々に生活しそれぞれ異性からの猛烈な誘惑にあい何日間か過ごす。その後の彼等の運命は如何に? というものなのだが、その期間中、自分の恋人の様子をビデオで確認し現状の本心を吐露する際に用意された場所が篝火の前である。「人は炎の前では正直になる」という意味なのかは定かではないが「炎」には代替の効かない効果が絶大にある。その番組では篝火(かがりび)を前に彼らは誘惑に負けそうな心情を語り、また自分の恋人の誘惑されている姿を見せられ嫉妬心を燃やし本音を吐くのだ。思えば、かつて参加したキャンプファイヤーでも炎の前ではみんな雄弁になったものだ。誰もが熱く語った昨夜のことが翌朝妙に恥ずかしかったりする記憶を持っているのではないだろうか。
動物は炎を怖れることしかできないが人間は炎を扱う術を学んだ。食事に暖房にと生活のためには欠かせない。今では「炎」本来の姿が日常から消えつつあるの。効率と安全を追求する現代ではオール電化が進みキッチンすら炎の居場所はないのだ。
童話「マッチ売りの少女」ではたった一本のマッチの炎の中に幸せな姿を映し出したのである。悲劇ではあるが、炎の魅力は計り知れない事を物語っている。 もし自宅に暖炉があったとしたら?人は燃える薪の音・揺らめく炎の中に何を見るのだろうか?家族への秘密があったとしたら、それを公表してしまうかもしれない。またはかつては乱用していても今では照れくさくて言えない愛を語る言葉が溢れ出すかもしれない。もしくは炎の虜となって言葉はまったくいらないのかもしれない。いずれにしても華がある人間と同様、何を語るでもなく人を惹きつけることには違いない。日常の雑事からのストレスを解き放ち、いろいろな事を気づかせてくれるのでは?と期待したいものだ。