「フィンランドサウナ文化の現在を知る旅」“それぞれの工夫が見えるサウナ”     クリエイションが人をあたためる街 ヘルシンキ

「フィンランドサウナ文化の現在を知る旅」“それぞれの工夫が見えるサウナ” クリエイションが人をあたためる街 ヘルシンキ

@ヘルシンキ Helsinki / July,2017

 

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Moi!ショウ吉永です。

今回は2017年秋に訪問したフィンランドのサウナ事情を二回に分けてレポートします。第二回はヘルシンキ市内および近郊で見つけた『デザインに惹かれるサウナ』を駆け足でご紹介します!

北欧クリエイティブの中心地・ヘルシンキとサウナ

モダンデザインに溢れ、賑やかながらも落ち着きを感じさせる首都・ヘルシンキ。フィンランドの南端ながら、その位置は北緯60度と北海道よりもずっと北。その厳しい環境を生き抜くためのクリエイティブはデザインにも発揮され、雅に人の心身をあたためるものとなっています。そして当然、その創造性はサウナにも向かっているのです。

今回は、少ない時間ながら滞在できたヘルシンキ周辺で見つけたデザインを感じさせるサウナをいくつかご紹介します。

湖畔に時折見られるサウナ小屋。個人所有のものから公共のものまで様々。

サウナと光と海を楽しむ 郊外ホテル「ランタプイスト」

最初に紹介するのが、ヘルシンキ中心部から車で20分ほどの郊外にある「ホテル・ランタプイスト」。森と海に囲まれたリゾートホテルです。

企業研修をメインに、郊外レジャーを楽しもうとするヘルシンキの人々が多く訪れるというこのホテル。清潔で温かみある内装、センスのよい小物類、窓から見える穏やかな自然、ハイキングツアーやカヌーツアーといった充実レクリエイションの提供など魅力も様々ですが、もちろんサウナ室も高ポイントです。

実はここのサウナ室、(サウナ室横の)海が反射する夕陽の光を取り込めるように窓の位置が設定されているのです。海面に反射した光が壁に映し出す美しい揺らめきを見つめながらのサウナ浴ができるのはなかなかの精神的贅沢です。しかも、サウナ浴後は海での冷水浴を楽しむことができます(ちなみにここは海水・淡水が半々ほどで混ざりあうエリアだそうです)。

元々フィンランドは、光を生活に取り入れるのが上手な国。自然の恩恵を貴重なものと捉え、同時に楽しみ尽くそうとする、そんなフィンランド精神が現れたサウナ室だと感じました。

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中央スオミでは、運が良いと湖面に反射した逆さオーロラが見られることも。

いざ出撃!大人も興奮する戦艦サウナ「ヴァルティオベネ55」

次に訪ねたのが、なんと戦艦の中にサウナ室を作ったという「ヴァルティオベネ」。戦艦?!驚きと同時に興奮してしまうまさかの組み合わせです。

早速どうやってこのサウナが生まれたのか、スタッフ(乗組員!?)に尋ねたところ「フィンランド軍で不要となった古い巡視船をオーナーが買い取り、改装したものだ」とのこと(ちなみにvartioveneとはフィンランド語で巡視船の意味だそうです)。

船内はikiサウナ(サウンストーン利用の電気式サウナストーブ)が設置されたサウナ室の他、プロジェクター付きのミーティングルームもあり、企業が接待やイベントのために貸し切りにすることもあるといいます。サウナ外交の国・フィンランドとはいえ、こんな場所で会議とは! 日本人がなかなか持つことのできない最高の遊び心です。

そしてこの戦艦は、観光で訪れる富裕層やF1レーサーなどによって貸し切りになることもあるとか。贅沢なサウナ遊びを楽しみたい人にはオススメのスポットでした。

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ヒッピーサウナ

最後に紹介するのは、現地の知人から存在を教わった「ヒッピーサウナ」です。その名は施設名(正式名称)ではなく、なんとなくそう呼ばれているというもの。

ヘルシンキ市内の埋立地横にいつのまにか誕生した(作者不明の)このサウナ、利用しているのは現地の労働者たちや、その独特な雰囲気を好むヒッピー文化好きの人々なのだそうです。特定の管理者はおらず、それぞれが個々で利用し、時に修繕することで共同利用されているものだといいます。

サウナがあらゆるフィンランド人の楽しみであること、その楽しみに主体的に取り組む人たちが多いことをを感じさせられる瞬間でした。

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生きる楽しみをクリエイトするチカラ

今回ヘルシンキで出会ったサウナは、どれも「さすがデザインの街」と思われるようなクリエイティブ性溢れるものでした。例えば「光」を大切にする北欧らしさが表れているホテル・ランタプイストのサウナ室。旧巡視船を平和的に、かつ豪快に再利用してしまう戦艦サウナ・ヴァルティオベネ55。そして誰かがつくり、別の誰かが修繕しながらシェア利用されるヒッピーサウナ。

厳しい寒さの中を明るく楽しく乗り越えるために、デザインの力、クリエイションを存分に発揮しながら生きるフィンランドの人々の在り方には尊敬を覚えます。

ですが、その魂は私たち日本人の血にも流れているものにも思えてきます。たとえば日本庭園に向かって開かれた丸い窓。まるで海とつながっているように水面位置が設計された露天風呂。そういった自然を愛でながら自己を癒やす(あるいは刺激する)クリエイションは、日本にも多数見受けられます。

私たちが関わる温浴の世界で、そういったクリエイションをいかに生み出せるか。自分たちに課せられた課題を改めて認識する、そんなヘルシンキ旅でした。

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ショウ吉永 Profile

 

福岡県生まれ。株式会社メトス代表取締役。本名・吉永昌一朗。

幼少期にボーイスカウトで自然と人の共存の重要性を学ぶ。航空自衛隊で整備士として働いていた時代、基地内にあるサウナへ同僚達と通ったことが、サウナの魅力を知るきっかけとなった。その後、アパレル業界、照明インテリア業界を経て、メトスへ入社。異色のキャリアならではの発想力と行動力で、日本の温浴文化を活性化させている。全国のサウナにロウリュを定着させるため、旧中山産業(メトスの前身会社)が蓄積していた膨大なノウハウと情報を活用し、「ikiサウナ」や「サウナisness」といったロウリュが可能なサウナヒーター、アウトドアでサウナ浴ができる「テントサウナ」など、これまでにないサウナを日本に広めた。近年は、サウナとエンターテイメントを融合させる「ロウリュ熱波隊」プロジェクトや、サウナヨガなど、サウナの新しい楽しみ方を研究・提唱している。共著に「温泉の百科事典」など。

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ホテル・ランタプイスト

Hotel Rantapuisto

 

<住所> Furuborginkatu 3, 00980 HelsinkiFinland
<TEL>+358 (0)9 319 1110
<アクセス>ヘルシンキから車で20分
<URL> https://www.rantapuisto.fi

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ヴァルティオベネ 55

Vartiovene 55 

<住所> Jollaksentie 27 A 00850 Helsinki, Finland
<TEL>+358 (0)44 283 1688
<アクセス>ヘルシンキから車で15分
<URL> http://www.vartiovene55.fi/

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ヒッピーサウナ

Hippie Sauna

 

ヘルシンキ某所