「フィンランドサウナ文化の現在を知る旅」森と水辺がもたらす贅沢時間 自然と人とサウナの蜜月地帯 中央スオミ
Moi! ショウ吉永です!
今回は2017年秋に訪問したフィンランドのサウナ事情を二回に分けてレポートします。まずは本気のフィンランドファンそしてサウナファンがハマる中央スオミ県のサウナの魅力を探ります!
緑と水とサウナの楽園 中央スオミ県
ヘルシンキから北へ3時間半ほど、フィンランド南部のほぼ中央にあるのが中央スオミ県(=中央フィンランド)。北緯61〜63度と北極圏少し手前に位置する中央スオミの広さは、およそ2万平方メートル(東京都の約10倍)。その土地の多くは針葉樹が生い茂る森ですが、さらに全体面積の20%を湖や川が占めています。
大自然から厳しい寒さを与えられると同時に、緑豊かな森と美しい水辺という恩恵を授かった中央スオミ。その結果、中央スオミでは他エリア以上にサウナが充実したのだそう。特に外気浴・冷水浴を同時に楽しめる『湖畔サウナ』が数多く誕生したといいます。そこにはプライベートなもの、パブリックなものの他、観光・レジャー向きのものも多く存在しているようです。
世界サウナ区としての中央スオミ県
いま、中央スオミは「世界サウナ区(Sauna Region of the World)」という旗をかかげ、大自然と共生する(楽しみ尽くす)フィンランドのサウナ精神をより深く体感できるエリアとして成長しています。そこで今回は、中央スオミで見つけた魅力的なサウナをいくつかご紹介します。
中央フィンランド観光局の紹介動画(英語)
中央フィンランド環境局の掲げる“Sauna Regiion of the World”のロゴ
中央スオミの入口となる都市は「ユバスキュラ」。ヘルシンキから電車または車で約3時間ほど北上した場所にあります。北欧デザインで有名なアルヴァ・アールトにゆかりがあったり(市内にはアールト博物館も!)、世界ラリー選手権(WRC)の開催地であったり、穏やかながら魅力と話題性のある街です。
やんちゃに遊べる屋形船「サウナ・ラウッタ」
まずひとつめは、屋形船気分でサウナを楽しめるという「サウナ・ラウッタ」。訪れたユバスキュラ湖の船着き場で見たのは、大きな“いかだ”に小屋を載せたようなユニークな屋形船でした。しかも小屋の上にはテラスも設置されています。
実はこの船、キャビンの中に薪式サウナがあり、船が湖を回遊する間にサウナ浴を楽しめるのです。さらに船上にはジャグジーも用意されています。さらに2階テラスは、のんびりと外気浴やバーベキューを楽しめるスペース。しかも船をお気に入りの場所に停めての湖での冷水浴も可能、なんと、2階から湖に飛び込むこともできます。
日本では考えられない自由な発想、自由なスタイルに驚き興奮するひとときでした。
ちなみにフィンランドには(規模や趣向の異なる)様々なボートサウナがあり、夏季メインで活動しているそう。そしてボートでのサウナ浴は、フィンランド人にとっても贅沢な楽しみなのだそうです。
中央スオミでは、運が良いと湖面に反射した逆さオーロラが見られることも。
バリエーションの豊富さと景色が魅力!「レヴォントゥリ・リゾート」
次に訪ずれたのは、ユヴァスキュラ地区ヨウツァにある美しい森と湖に囲まれた一大レジャー(宿泊)施設「レヴォントゥリ・リゾート」です。
レヴォントゥリでは、ゴルフ、スキー、カヌーなど様々なアクティビティと並んでサウナが大人気。各部屋ごとに設置されたサウナの他、薪火を使った古き佳きスモークサウナ、アウトドアファンに人気のテントサウナ、大人数で楽しめるログハウス風などが用意されています。個人や家族がくつろぐ場所として、仕事仲間とのサウナ外交の場として楽しまれているようです。
もちろん目前に拡がる美しい湖での冷水浴も可能。サウナ伝道師によるねづの新葉(!)を使った刺激的なランバスティン体験や、サウナの歴史を学びながらサウナを満喫できる体験プランなどもあり、充実のサウナ入門体験を楽しみたい観光客にも絶好のスポットになっています。
今回はここで一泊できたのですが、ディナーを楽しんだ後に、なんと!夜空にオーロラを見ることができました。実は施設名のレヴォントゥリはフィンランド語で『狐火』、転じてオーロラを表す言葉なのだそうです。私たちの訪問した9月前後は、運(そして天気)がよいと幻想的なオーロラを見ることができるのだそう。とてもラッキーな出来事でした。
森と湖の中央スオミは霧に包まれると幻想的な風景に。
サウナ・エステも体験できる森の中のサウナ「ヴァルヨラ・ホリデーセンター」
最後にもう一件おじゃましたのが「ヴァルヨラ・ホリデーセンター」です。5世代に渡り農牧場を営む家族が経営する観光ファームには、会議室や、キッチン付きのコテージ、レストラン(夏限定!)、種類豊富なサウナなど施設も充実しています。
ここで私たちが注目したのは、有料サービスのひとつであるサウナ・エステです。国内でサウナ・サラピーの手法を学んだスタッフが提供する泥パックをはじめとしたサウナ・エステは、美意識やボディメンテナンス意識の高い女性たちの注目を集めているそう。「友達同士や偶然で出会った女性たち同士で同時に体験することでヒーリング効果が高まる」という話は、とても興味深いものでした。
もちろんヴァルヨラには、男女問わずに楽しめるサウナ(スモークサウナ、テントサウナなど)もあれば、散策や釣り、急流下り、サバイバルゲームなど広大な敷地と大自然を活かしたアトラクションも豊富。働いて・遊んで・心身を整えて……とパワフルな人にも、ゆったり大自然と戯れたい人にもピッタリなスポットでした。
「地域資源✕いつも以上」の可能性
中央スオミの魅力は、なんといっても見渡す限りの大自然。そこに訪れるだけで旅行者はスペシャルな非日常を体験できます。さらに中央スオミには、湖畔サウナという「大自然のもたらす非日常」と「地域独自の文化」、そして「日常的な楽しみである温浴」が絶妙なバランスで掛け合わさった素晴らしいレジャーが待っています。
私が今回感動したのは、そんな恵まれた状況にある各施設それぞれが「自分の施設にしかない価値」を模索し形にし続けていることでした。フィンランド人として、みずから自然を愛し、共に生きる術としてのサウナを大切にしながら、それ以上の価値を旅行者に提供することを志す、日本と共通する「おもてなしの精神」がそこにはありました。言い換えれば、そのおもてなしは「地域資源」と「いつも以上の体験」をかけ合わせてゆく遊び心と言えるかもしれません。
現代、観光には「見る価値」以上に「体験する価値」が強く求められています。地域の魅力を最大限活かしながら、いかにおもてなしとしての体験を創り出してゆくか。そこで温浴にできることは何か。常に考え続けていきたいと思いました。
(2017年9月に取材)
中央フィンランド観光局について
今回の取材は「中央フィンランド観光局」のサポートを得て行われました。中央フィンランド観光局では、webサイトその他を通じて現地の様々な観光情報を世界に伝えています。今回の記事を見て中央スオミでのディープなサウナ体験に興味を持たれた方は、ぜひ中央フィンランド観光局の情報をチェックしてみてください(写真は、ショウ吉永の左がウルヤスさん、右がハイビさん)。
中央フィンランド観光局
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ショウ吉永 Profile
福岡県生まれ。株式会社メトス代表取締役。本名・吉永昌一朗。
幼少期にボーイスカウトで自然と人の共存の重要性を学ぶ。航空自衛隊で整備士として働いていた時代、基地内にあるサウナへ同僚達と通ったことが、サウナの魅力を知るきっかけとなった。その後、アパレル業界、照明インテリア業界を経て、メトスへ入社。異色のキャリアならではの発想力と行動力で、日本の温浴文化を活性化させている。全国のサウナにロウリュを定着させるため、旧中山産業(メトスの前身会社)が蓄積していた膨大なノウハウと情報を活用し、「ikiサウナ」や「サウナisness」といったロウリュが可能なサウナヒーター、アウトドアでサウナ浴ができる「テントサウナ」など、これまでにないサウナを日本に広めた。近年は、サウナとエンターテイメントを融合させる「ロウリュ熱波隊」プロジェクトや、サウナヨガなど、サウナの新しい楽しみ方を研究・提唱している。共著に「温泉の百科事典」など。