「フィンランドサウナのルーツを求めて」フィンランド現存最古の公衆サウナ ラヤポルティ・サウナ
@タンペレ Tampere / October, 2014
Moi!(フィンランド語でこんにちわの意味。)
ショウ吉永です!
2014年秋にフィンランドのサウナ旅をした際のレポートをお届けします。
サウナ発祥の地と言われるだけあって、フィンランドはサウナが熱い!
フィンランドサウナの魅力を少しでもお伝えできると幸いです。
タンペレ市街にあるフィンレイソンの建物
ラヤポルティサウナのある街・タンペレ
ヘルシンキ中央駅から北西へ電車で約2時間。1820年に創業した生地メーカーのフィンレイソンの工場もあり、紡績業を中心とした発達したため、労働者の街としても知られていました。現在では世界的なITメーカーのノキアもこの地に多くの工場を持っており、人口は約20万人、ヘルシンキに次ぐフィンランド第2の都市です。
写真出典:PUHRASTA TULI (2006, Finland)
ラヤポルティ・サウナは、1906年にラティネン夫婦が始めた公衆サウナ。サウナ小屋ができる前にはパン屋と小さな商店を1904年から営んでいたという記録が残っています。
都市と田舎の間に位置することもあり、体を綺麗にしてから目的地へ向かう人も多かったものの、1980年代に閉鎖の危機に直面しました。しかし、サウナの存続を望む有志が集まって再開し、1989年には地元のサウナ協会が運営責任者となり、1996年からはタンペレ市もラヤポルティ・サウナをサポートするようになりました。2014年現在ではタンペレ市の観光名所のひとつとして、地元や各地から年間2万人もの人が訪れる屈指の人気公衆サウナです。
地元のサウナ協会にも所属し、ラヤポルティ・サウナで働く運営者のひとり、ベイッコさん。サウナ準備で忙しいところ、閉鎖の危機の頃に有志で運営を手伝っていた頃の話や現在の人気店に至るまでの様々な話を聞かせてくれました。
来客者の3人に2人が男性、月曜と水曜は割安で入れるため学生が多く、火曜日にはサウナ温度を少し下げてヨガサウナも実施しているとのこと。
ラヤポルティサウナの室内。薪式サウナで、サウナストーンには香花石(※日本で一般的に使われるサウナ用の石)を使わずオリジナルのサウナストーンを使っていました。
サウナ室は2階構造となっていて温度は約75度程度に保たれている。1階が洗い場、2階が一段ベンチとなっていて、定員は約10名。水風呂は無く、中庭や隣のカフェでクールダウンします。
美しい庭で火照った身体をクールダウン。水分補給をしつつ、リラックス。
フィンランド人とサウナの深いつながりのことを教えてくれた人達。
「フィンランドのサウナは我慢せずに入るんだ。自分のペースで。」
「サウナを出るときに水をサウナストーンに2回かけるよう、子どもの頃家族に教わったんだ。
1回目はサウナ室にいる人のため、2回目はトントゥ(フィンランドに古くから伝わる妖精の一種)のためにかけなさいって。」
「毎週一度は家族全員で家のサウナに入ってるよ。」
「こっちは冬でもサウナに入るから風邪をひかないんだぜ。免疫力があがるんだよ。」
「むかしはサウナで赤ちゃんを出産したんだよ。
人が死んだときもサウナで体を洗ってからお墓に入ることもあったんだ。
むかしの話だけどな。」
「今日は娘と来てるんだ。いまはもう7才だけど、
この子が初めてサウナに入ったのは生まれて2週間目だったかな。
娘とサウナに来るのは、いいもんだよ。」
閉鎖の危機から年間2万人が来る人気サウナ店へ
閉鎖の危機に追い込まれた公衆サウナ店を、屈指の人気店にまでしていった情熱と運営ノウハウの構築は他に類をみないのではないでしょうか。ロウリュへのこだわりはもちろん、地元の常連客さんも、外からくる新規のお客さん大切にするサービス精神と、遠くの人にまでラヤポルティサウナの良さを伝えようとする気持ちが、たった一度のラヤポルティサウナ体験でも伝わってきました。
サウナ室内、更衣室、クールダウン中の中庭やカフェでも、友達や家族の話などいろんな話を通して、お客さん同士がコミュニケーションの場としても機能している印象でした。
体が温まると心がリラックスして、クールダウンしながら話をするのも含めて楽しむのもフィンランドサウナの楽しみ方のひとつだなあ…としみじみ感じました。
ラヤポルティ・サウナ
Rajaportti Sauna
<住所> Pispalan valtatie 9, FI-33250 Tampere, FINLAND
<営業時間> 月・水18 – 22/金 15 – 21/土 14 – 22
<TEL> +358-(0)3-222 3823
<アクセス> ヘルシンキ中央駅からタンペレ駅まで電車で約2時間。
タンペレのセントラルスクエアから西へ向かう青いタンペレシティバス(8番, 11番, 13番, 17番, 26番, 27番, 28番, 29番, 36番, 70番,72番)に乗り、6つめのバス停「Rajaportti(ラヤポルティ)」で下車。
ショウ吉永 Profile
福岡県生まれ。株式会社メトス代表取締役。本名・吉永昌一朗。
幼少期にボーイスカウトで自然と人の共存の重要性を学ぶ。航空自衛隊で整備士として働いていた時代、基地内にあるサウナへ同僚達と通ったことが、サウナの魅力を知るきっかけとなった。その後、アパレル業界、照明インテリア業界を経て、メトスへ入社。異色のキャリアならではの発想力と行動力で、日本の温浴文化を活性化させている。全国のサウナにロウリュを定着させるため、旧中山産業(メトスの前身会社)が蓄積していた膨大なノウハウと情報を活用し、「ikiサウナ」や「サウナisness」といったロウリュが可能なサウナヒーター、アウトドアでサウナ浴ができる「テントサウナ」など、これまでにないサウナを日本に広めた。近年は、サウナとエンターテイメントを融合させる「ロウリュ熱波隊」プロジェクトや、サウナヨガなど、サウナの新しい楽しみ方を研究・提唱している。共著に「温泉の百科事典」など。