サウナとは
サウナという響きの良い言葉は、世界中どこでも通用するフィンランド語の一つです。日本語の中にも、すし、天ぷら、柔道、空手等どこの国でも通用する言葉になっているものもあります。しかし、ある国のある町で、メニューの天ぷらという懐かしい文字を見て頼んでみたら、思わずこれが天ぷらかとつぶやいてしまうことがあります。 サウナについても同様で、フィンランド人にとって、サウナが世界的に普及し、外国へ行けば、多少本来のサウナとは異なったものになってしまうのは仕方のない事とは思うものの、これがサウナかというようなものも多く、情けない思いをしているようです。 日本でも、いく種類ものサウナがありますが、サウナではないのにサウナと名のついた紛いものもあります。ここでは、一番普及率の高い、電気式の伝統的フィンランドサウナを例にとり、説明したいと思います。
(イ)サウナ室
サウナ浴を楽しむための部屋で、大きさはその用途によって変ります。出入口のドアを開けて中に入ると、普通は正面の壁面に、入浴者が横になったり、座ったりする木製のベンチが2〜3段設置されています。
壁、天井の内装は木仕上げで、周囲の下地は、防熱層や防湿層で覆われています。床には木製のスノコが敷かれています。このようにサウナ室内が木仕上げとなっているのは、室内が高温になっても火傷をしないこと、室内の温度が高まると、木の表面からまろやかな輻射熱を放射して、全ての方向から身体を暖めること、また、何よりも人を精神的に落着かせるからです。金属類に触れたりすると火傷をしますから、釘等も全て隠し釘とし、肌に触れないように施工します。
使用される木材は、日本では、アラスカの方から輸入されるスプルスが一般的です。高温の環境の中で、しかも人が裸で使用する為、木材であれば何でも良いというわけではなく、肌に触れても熱さが鋭くなく、熱の為に割れたり、ささくれだったりして、肌を傷つけないものが使われます。日本人は昔から檜木を重用してきましたが、外国人には、臭いが強い為嫌われるようです。アフリカ産のアバチ(桐科)も、最近は多く使われるようになりました。
「サウナの正しい入り方」のところで書き忘れましたが、たまに金の(本物かどうか知りません)ネックレスやブレスレットをして、サウナに入っている人を見ることがありますが、火傷の危険があります。
次に横を見ますと、サウナ室の一隅に、サウナストーブが設置されています。ストーブの上にはサウナストーンが積まれ、自然対流によって室内を加熱するとともに、サウナストーンからも輻射熱が放射されます。気がつきにくいかもしれませんが、壁面には、給気孔と排気孔が設けられ、絶えず外部からの新鮮な空気で換気されています。
サウナ室の温度は、好みの温度に設定すると、自動温度調節器で一定の温度に保たれます。万一、自動温度調節器が故障した場合に備えて、室温がある温度以上になった時は、自動的にサウナストーブを停止する安全装置も設けられています。 パブリックサウナでは、消防法規に基づき、火報装置や、条件によってはスプリンクラーまた非常用のブザー等も設置されます。営業用サウナでは、好ましいことではありませんが、テレビが設置されます。サウナは、日常の忙しさやストレスを汗と共に流しさるところですから、照明の照度も少し落とし、静かな雰囲気にしたいのですが。
日本におけるパブリックサウナに対しては、建築基準法、消防法、公衆浴場法等の法律により、安全面や衛生面の規制がなされています。パブリックサウナというのは、個人住宅以外のサウナで、例えば営業用サウナや公衆浴場のサウナ、スポーツクラブやスイミングプールのサウナ、ホテルや旅館のサウナ、会社の厚生施設のサウナ、などの不特定多数の人が利用するサウナをいいます。
(ロ)サウナストーブ
サウナの心臓のようなものですが、熱源によって
- a.薪焚き式ストーブ(日本にはない)
- b.電気式ストーブ(一番普及している)
- c.ガスや液化ガス式ストーブ
- d.オイル焚き式ストーブ
等があります。
いずれのタイプのものにしろ、サウナストーブには、二つの大事な役目があります。ひとつは、サウナ室の温度差を高めること。もうひとつは、ストーブの上に積まれたサウナストーンに水をかけて、蒸気を発生させることです。これは、本場のフィンランドでは当然のことですが、他のどこの国でも大事にされています。サウナストーンに水を掛けて、蒸気を発生させることを、フィンランド語でリョーリュー(Lolyo)と言い、リョーリューによってかもし出されるサウナ室内の熱循環を、リョーリューが良い等と言って楽しみます。日本で湯につかった時、いい湯加減だというのと同じです。
日本では長い間、パブリックサウナ(一番世間への影響力は大きい)では、この習慣がありませんでした。お客のマナー問題、個人個人の好みを配慮してPRをしなかった為です。ここ数年ようやく、そのよさが理解されて、街の営業店でもリョーリューを楽しめるようになりました。店によって異なりますが、ドイツ人のクアハウスのように、サウナ管理士が時間になると演出してくれるところもあるし、光や音の効果と共に、自動的に石に水をかける装置のあるところもあります。
「サウナの正しい入り方」のところでは触れずに後半へ回したのは、リョーリューというのは、サウナ浴において重要な楽しみ方であるからです。サウナは、単なる汗かき室ではないのです。
(文責:中山真喜男)