個粋導入施設スタッフの生の声を聞きました。

VOICE with

社会福祉法人 ナザレ園 編 vol1

2016年1月、養護老人ホームの敷地内移転を終えた『社会福祉法人 ナザレ園』。新施設の個浴浴室には檜浴槽タイプの個粋が、ユニットごとの配置された浴室にはリフトなし個粋が導入されています。

今回の記事では移転後の施設についてご紹介するのと同時に、ナザレ園副理事長へのインタビューの様子をお届けします。うかがったたくさんの興味深い話から、まずは前編として、施設のこれまで、そして最近の支援事例の話をご紹介します。中には、東日本大震災時のナザレ園の活躍など、地域災害について考えさせられるお話も。ぜひご覧ください。

社会福祉法人ナザレ園とは

ナザレ園全体を写した航空写真(ナザレ園facebookページより)。右下のオレンジの屋根の一群が新・養護老人ホーム。

はじめに、今回、個粋が導入された「社会福祉法人ナザレ園」についてご紹介します。

「社会福祉法人ナザレ園」が誕生したのは、戦後間もない1949年のこと。当時は、戦争によって一家の働き手や家族を失った女性たちが近隣の寺社や教会などに身を寄せていた時代。そんな中、那珂市『瓜連キリストの教会』の伝道者と協力者が近隣の身寄りのない高齢女性たちを支えるために小さな家を建てます。その家はイエスのふるさとであるイスラエルの都市・ナザレに由来して「ナザレ園」と命名されました。これが、社会福祉法人ナザレ園誕生のきっかけです。

その後ナザレ園は、養護施設、特別養護老人ホーム、救護施設、盲老人ホーム、デイサービスセンターなど様々な福祉施設をスタート。現在では、4つの福祉施設(施設サービス)と各種の在宅サービス(在宅支援サービス)、そして保育園を経営しています。尚、すべてのサービスは『地域内の困っている人を放っておけない』という精神から生まれたもの。国の制度に先駆け、奉仕活動としてはじまった支援活動も多く、地域の人々に向けられる視線の温かさが感じられます。

天井が高く窓も大きく、開放感のある大食堂。現在、地域イベントの会場としても活躍している。

礼拝室にはナザレ園のマークを形どったステンドグラス。光の差し方次第で床に鮮やかな赤と青が浮かぶ。

法人職員用ラウンジ。

スタッフの休憩やイベント、研修等に使われたりする。

明るい印象のビューティーサロン。ガラス張りにして中を見せることで利用への敷居を低くしている。

洗濯室(写真中央右)の前には談話コーナーが。洗濯ものを畳みながら生まれる何気ない会話も大切。

広い建物内は『住所』で区分。これは地域で暮らしている感覚や自宅にいる感じ、個を大切にするため。

居室の窓からの風景。困窮状態にいた入居者を、自然とナザレ園がやさしく迎え入れる。

敷地内に作られた小川。施設内では様々な『心地よさのための試み』が見つけられる。

ユニット毎に設置されたお風呂の中にはリフト無し個粋も。『制度がいつ変わるかわからないので浴槽だけでも導入しました。リフトは必要になったときに追加します』とのこと。そんなことができるのも個粋の魅力。

現場インタビュー

「すべての理想を、当たり前に。ナザレ園の思いと挑戦」(前編)

INTERVIEWEE

副理事長 菊池さん

某メーカーの海外駐在員を10数年経験の後、福祉業界に転職。現在、社会福祉法人ナザレ園の副理事長を務める。社会福祉士、精神保健福祉士、福祉施設士などの資格を持つ。日本社会事業大学専門職大学院修了。福祉マネジメント修士。

INTERVIEWER

瀬尾卓志(せお・たくし)

1997年より老健施設で介護福祉士として勤務。2002年より川崎医療福祉大学でプロダクトデザインを学ぶ。メトス入社後、個粋の開発にも携わり、個粋には人一倍愛着をもっている。

瀬尾

今日はインタビュー前に施設内をいろいろ見せていただきました。その中で、施設の取り組みの素晴らしさを感じたのですが、それと同時に感じたのが、こちらの理事長のお風呂に対する情熱でした。お風呂をとても大切にされていますね。

菊池

そうなんです。お風呂を入れる方法にもすごくこだわりがあって。お風呂を楽しんで欲しい一心なんですね。この法人の基本理念の中に『安心して楽しめる生活を支援します』という表現があります。利用者さんを見ていると、食事とお風呂は皆さん共通の楽しみなんですね。なので私たちは、一日三回の美味しい食事と、少しでも多くの入浴を提供しています。たとえば、ここの養護老人ホームでは週三回お風呂に入れるようになっています。救護施設の自立している方には毎日お風呂入っていただいています。ちなみに施設基準では『週に二回、入浴か清拭をしなさい』だけなんです。でも、それよりも多く。だって、楽しみですから。時間が近づくと浴室の前で待っている人もいますね。そういう意味では、基本理念の中の重要なキーワードである『楽しめる』は、お風呂ともすごく関係があるように感じますね。

菊池

ちなみに、安心ということで言えば、私たちは入居者さんが安心していられる場所をつくっていきたい。さらに地域で暮らしている方にも「いざとなればナザレに行けば安心」「災害があってもナザレに行けばなんとかなる」と思ってもらえる安心を提供していきたいです。自分なり、親なり、こどもなり、親戚なり、近所の人なり、身近に困っている人がいたときに『ナザレ園に紹介すればなんとかなるだろう』と考えてもらえるようになりたい。そう思っています。

瀬尾

その話には、先ほどの施設見学時に聞かせていただいた震災時のエピソードが重なりますね。(※)東日本大震災時のナザレ園では、水道・電気等のライフラインが絶たれていたものの、薪ボイラーと井戸水があることでお風呂が沸かせていた。そのお風呂は、入居者にはもちろん、地域住民や現地で活動する警察官にも開放されていたとか

菊池

そうですね。今回新しくできた養護老人ホームも、ソーラー発電や薪ボイラーを取り入れることで、ライフラインが絶たれても機能するように設計されています。もちろん災害時に地域の人たちを受け入れることは大前提です。ちなみにボイラーは電気を使うペレットボイラーも設置しているのですが、「電気不足でも使える」「やっぱり薪で沸かしたお湯が一番!」と理事長がいつのまにか薪ボイラーを入れていました(笑)。

瀬尾

方法だけでなく、質にもこだわっているんですね(笑)。ちなみに『薪で焚いたお湯は身体を芯から温める』とも言われています。災害などで苦しい状況のときに、芯から温まれるお湯に入れることは、生きるチカラにつながる気がします。それこそお風呂にできる最高のアプローチですね。

「ナザレ園とは?」の問いに対するスタッフの答えを集めて作られた基本理念(写真はナザレ園facebookページより)。

竣工時に書かれた茨城新聞の記事(写真はナザレ園facebookページより)。左上は薪ボイラー好きの理事長。

瀬尾

うかがっているお話からは、お風呂もそうですが『地域』をとても大切にしていることがうかがえます。本当に重要なキーワードなんですね。

菊池

はい。地域の人を大切にしたいという思いから、施設サ―ビスだけでなく、在宅支援サービスへの取り組みがはじまっています。ここでちょっと、私たちの活動の原点である『地域内の困っている人を放っておけない』という精神について知ってもらえるであろう最近の事例を話してもいいですか?

瀬尾

ぜひ、お願いします。

菊池

私たちはいま、法人の自主事業で『生活サポート事業』っていうのを立ち上げています。その事業では、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持っている職員に、兼務で『コミュニティソーシャルワーカー』として活動してもらっています。活動内容は、コミュニティソーシャルワークに関する勉強会の実施や、地域で困っている方……特に『社会的孤立』をしている方のところに実際、足を運ぶというものです。お話したいのは、その活動の中の一例についてです。 たまたま当法人の配食サービスを使っていた方なんですが、男性の一人暮らし、家は相当ボロボロの状態、庭木は手入れがされていなくて、庭には大小様々なモノが散乱。世間でいう『ゴミ屋敷』に暮らされていたんです。ちなみにゴミ屋敷、ナザレ園では『資源屋敷』って呼びます。無駄なものは何もない、という考えからです。

瀬尾

資源!いい見方ですね。本人は、全部意味があって残しているはずで。

菊池

その通りです!それで話を戻すと、その方に食事を届けていた(見守り機能も兼ねている)職員が「この人、ほっといたら大変なことになりそう、死ぬかもしれない」とフィードバックしてきて。別の職員が行ってみたら、やっぱり社会的孤立状態。近所の人ともまったく交流がなく、嫌がられている人だったんですね。

瀬尾

はい。

菊池

足が悪く、以前は使えていた自転車にも乗れず、買い物には行けない状態。だから、一日一食の配食サービスで生き延びていたわけです。で、庭にはとにかくモノが散乱、なぜか壊れた洗濯機や冷蔵庫がいくつもある。庭木が茂ってジャングルのよう。さらに縁側にはダンボールが山積み。本当にワケがわからない状態でした。 そこで、コミュニティソーシャルワーカーが、その方のところに通いました。信頼関係をつくるのには、すごく時間がかかりました。でも、信頼関係ができてくると、ニーズや理由がわかってくるんです。

瀬尾

信頼関係、大事ですよね。アセスメントの基盤です。改まった聞き取りでは、事実も本音も中々出てこないし。信頼することは、気を許すことでもあります。そんな関係性で行われる何気ないコミュニケーションの中で、ヒントが見つかるかるものですよね。

施設勤務経験もあるメトス瀬尾。以前からナザレ園の活動に興味があったこともあり、熱心に耳を傾ける。

菊池

はい。私たちは最初に、縁側にある膨大な量のダンボールの撤去を目指しました。ここで大 事なのは「これ片付けましょうか?」みたいな言い方は一切しないことですね。 職員は「実はナザレ園で、リサイクル活動をしていて。このダンボールがお金になるんです。ナザレ園の活動のために、もらっていってもいいですか?」と男性に尋ねました。そういった言い方で、はじめて「しょうがねえなあ」っていうことでいただけるわけです。そして、トラック一杯分のダンボールを片付けることができました。私も手伝いましたが、本人はスッキリした様子でしたね。 そのとき、やっとダンボールが溜まるまでのエピソードを聴けました。実は、この地域では時々、こども会主催のダンボール回収があるんですね。それでどうやら男性は、回収に来るこどもたちと交流が持ちたかったそうなんです。ダンボールを溜めて、こどもたちに「あいよ!」って渡したかった。けど、引率に来た大人の「ちゃんと畳んで、紐でしばった状態じゃないと持っていけません」という一言に「そんなら、やらねえ!」と怒ってしまったんです。それ以来、行き場のないダンボールが溜まったままになっていたんですね。

瀬尾

やっぱり、本人には意味のあるものだったんですね。たまったダンボールは、彼の思いだったという。

菊池

はい。彼の思いが、行き場をなくしていた形ですね。 ちなみにダンボール撤去後、さらに信頼関係ができた頃、庭にあるすごい量の資源……ゴミの撤去を目指しました。ここでもゴミって言葉は使わず「お片付けをお手伝いしましょうか」とアプローチしました。すると「できれば庭木も切ってくれないか」という話になったんです。どうやら役所に相談したことはあって、その時に「シルバー人材センターに切ってもらえばいい」とアドバイスをいただいていたそうなんですが、実際センターに問い合わせところ、その料金が(男性にとっては)すごい額で。シルバー人材には頼めない、でも自分では切れない……となっていたそうなんです。そこで「ナザレでやってくれないかな」と頼まれました。早速、職員が行って、庭木を剪定して、ジャングルを陽の光の差す庭に変えて。さらに「ついでに、これも片付けませんか?」と資源(いわゆるゴミ)の散乱する庭を指したら「いいよ」と。そのときは、ナザレのスタッフ数十人が一同に庭へうかがいました(笑)

瀬尾

この機を逃すまい、と(笑)。

菊池

はい!ちなみに庭には8台ほどの洗濯機が転がってました。おそらくなんですが、お金がないから中古店から安く手に入る中古を購入していたんです。安かろう悪かろうであっても、です。さらに、壊れても、捨てるのにお金がかかるから捨てられない。それで庭に置いて、また中古を買ってきて……その繰り返しだったんだと思います。

瀬尾

2001年施行の家電リサイクル法ですね。回収してもらうには料金が必要、という。確かに貧困状態の場合の支払いは厳しいかもしれません。貧困が捨てられないゴミを増やす……悪循環を生んでいたんですね。

菊池

おそらく。ちなみに、庭には他にもいろいろ散乱していました。多かったのが、栄養ドリンクの空き瓶と空いた魚の缶詰。土の中にも埋まっていて、なんていうか……未来の人たちが偶然発掘したら「古代の人はこういう生活をしていたのか」って思うんじゃないかってくらいに(笑)。

瀬尾

21世紀の貝塚が(笑)

菊池

(笑)それくらいいっぱいあったんです。食べるたびに、ポイッと捨てていたんでしょう。 けど、そこで男性の日々が想像できますよね。「ごはんは炊ける。でも料理するのは大変。だからおかずは……魚があればいいか。栄養はリポビタンD飲んでおけばなんとかなるか」って、そんな状況が思い浮かびます。だから私たちが思ったのは「この人、すごく頑張ってきたんだな」ということです。福祉用語でいう『ストレングス=生きていくためのチカラ』があるな、って。

瀬尾

ストレングス(人の持つ強み)に注目するのは大切なことですね。できないことばかりに目を向けるのではなく、強みを見出すことは、ケアプラン作りのためだけでなく人を見つめる上で欠かせない視点だと思います。

菊池

そこはちゃんと汲み取っていきたいところです。ちなみに庭のゴミを撤去していく中で、庭の奥にタイルの貼られた浴槽らしきものを見つけました。もちろん使えない状態で、中には大量のゴミ。職員は浴槽ごと撤去しようとしたんですが、男性が「それは捨てちゃダメだ!大事なものなんだ!」って。理由は言わないんですけど。おそらくそれ、離れで使われていた浴槽なんです。もしかしたら、こども時代の、あるいはそれが壊れるまでの思い出がつまっている浴槽なんですよね。今はいない家族との思い出があったりするんでしょう。

瀬尾

お風呂にまつわるドラマが。

菊池

はい。そのとき『お風呂って、人にとって大事な場所なんだな』と改めて感じさせられました。

瀬尾

すべての人が、とはいえませんが、お風呂がかけがえない場所である人は確実にいるんですよね。お風呂で、かけがえのない時間を過ごしてきた人たちが。そしてそのかけがえなさは、心地よさと共にある気がします。だからこそ私たちも真剣に『心地よいお風呂とは何か』と考え続けるし、それを形にするために行動し続けることができます。この施設に入った個粋が、誰かにとってのかけがえのない時間に寄り添うものになるといいな、と思ってしまいますね。ひとときの安心や満足だけでも提供できたら、と。

菊池

実は、この話の流れで、個粋……新しいお風呂に活躍してもらえたらと思っているんです。その前に、ゴミ撤去後の男性の状況についてお話させてください。

身振り手振りを加えながら説明する菊池さん。困窮者の置かれた状況へ視線は鋭いが、人柄は穏やか。

旧・養護老人ホームに貼られていた、ナザレ園の優しさを感じるメッセージ。

「人を温め続ける場所」

今回の訪問は旧・養護老人ホームの見学からスタートしました。昭和36年(1961年)に作られた施設はかなり老朽化していましたが、様々なドラマ、支援の歴史、ナザレ園スタッフの意気込みが垣間見られる素晴らしい場所でした。東日本大震災時にも活躍した『薪の湯』がどれだけの人々を温めてきたかを考えると、胸にグッとくるものがありました。次に見学した新・養護老人ホームも、新たな挑戦・前進に向けての思いを随所に感じられ、そんな施設に個粋が導入されたことを誇らしく感じたのを覚えています。

その後のインタビューも、菊池さんおよびナザレ園の支援者としての姿勢と行動力、そして地域へのまなざしを感じられる素晴らしいものでした。

途中『ストレングス』という単語が出てきましたが、福祉を学ぶ人には有名な『ストレングスモデル』、その6原則には『我々の主な仕事場は地域である』という文言があります。そのフレーズを思い出したとき、自分たちが地域の中の存在であることを意識し、常に地域の人々と共にあろうとするナザレ園の姿勢につながるものを感じました。

次回のインタビュー後半では、今回紹介した支援事例の続きの他、現在の高齢者や養護老人ホームを取り巻く状況について、そしてこれからのナザレ園が目指すものや今後の取り組みなど、興味深い話が語られます。お楽しみに。

施設情報

名称/社会福祉法人ナザレ園 養護老人ホーム
住所/〒319-2103 茨城県那珂市中里361番地2
電話/029-296-0315
交通/JR水郡線 常陸鴻巣駅又は瓜連駅より2km
ホームページ/ http://www.nazareen.or.jp

■ 導入商品
個粋のページ / http://metos.co.jp/products/carebath/coiki/
檜浴槽のページ / http://metos.co.jp/products/carebath/hinoki/