ドブレ700SL / DOVRE 700SL
今回、登場するのは、ドブレ トラディショナルシリーズの金字塔ドブレ700SLです。http://metos.co.jp/mt4/mt.cgi?__mode=view&_type=entry&id=6862&blog_id=9#
その昔、ドブレ クリーンバーンシステムの実力を日本中に知らしめた思い出深い名機です。
ちなみに、うちで働くI君の家にも子供のころからありました。
もう二十数年経ちますが、昔も、今もまったく変わらない現役です。
ドブレ700SLを焚くとき、いつも質実剛健なドブレストーブの心意気を強く感じるんです。
■不思議なフォルム
□立ち姿
炎の良く見える大きな窓・側面鋳物のレリーフも渋いです。側面は対流2重構造になっています。
*天板に座っているトントゥ君(フィンランドの妖精)アロマポットはご愛嬌。
□大きな炉(燃焼室)
炉内有効寸法 W500mm×D280mm×H300mm(中心部)
手前の薪は50㎝強のねじれて太っといコブコブの雑木薪
こんな太薪も余裕で入ります。
パワーもあるし、火持ちも良さそうですね。
□伝統のクリーンバーン バッフルプレート
クリーンバーンシステムを採用しているので炉内の炉高が十分に確保されています。
炉内中心部で高さが300mmもあります。
また、天板はシングル構造ですので、天板温度250℃~300℃まで上昇できます。
すぐお湯が沸かせますよ。
そしてみごとなクリーンバーン。
ドブレ700SL独特の美しい炎の揺らぎを演出する心臓部でもあるんです。
□正面扉
アーチ型の耐熱ガラス窓が美しいですね。
取手は、レバーハンドル式です。
□右側面の薪投入扉
右側面に薪投入扉(サイドローディング機構)です。開口部寸法W200mm×H220mm
真っ直ぐ素直な薪を投入します。
炉のサイズのわりには、比較的小ぶりな投入口に見えます。
この、小ぶりな投入口の理由は、後でご説明しますね。
□なで肩
このデザイン、視覚的に不思議な効果を・・・・
ドブレ700SL(出力11kw)の隣にいるのは、ドブレストーブの中でも一番ベビィーなドブレ350CB君(出力8kW)です。身長は72㎝。
対してドブレ700SLさんの身長は71cm(なで肩部で67cm)。
なで肩デザインによって11kwクラスの薪ストーブにもかかわらず、 キュッと引き締まった印象をあたえてくれます。
誰ですか?短足だから・・・なんて言わないでネ
アッシュリップ(テーブル)の下には独立した灰受け扉と、灰受けトレイがあります。
「灰受けトレイが小っちゃいね」っていわれることもあるんですけど作業をするときには
意外と取り回しが良いので、結構気に入っています。
(灰受けトレイ寸法 W230mm×D270mm×H50mm)
■着火作業でシンプル機能を楽しもう。
ドブレストーブに共通しているのは、その操作性のシンプルさです。
「やり過ぎず」それでいて「怠らず」絶妙のバランスが魅力です。
1.薪の用意
よしっ。イメージトレーニングも完了!
<用意するもの>
中細ナラ薪(150φ半割 長さ38センチ)3~4本
杉の木クズ一握り(昨年の残り物)
スギ板とパインの木端(5本程度 焚きつけようにストック)
ライトバグ 1粒
2.炉内の灰をチェック
炉床には、灰はある程度、残っていたほうがオススメです。火持ちが良くなります。
ゴソゴソと灰をならして、アッシュカバーからの空気流入の通り道を確保してあげます。
3.薪くべ
今回は、中級者編で、少し小技を織り交ぜて。
手前に太め薪をドン。木端スギをガードレールにして縦置き。
その後ろに薪をドン。ドン。こうすると空隙も確保でき火の廻りも早いし、ガラス側に
薪が崩れ転げてこないんですよ。
4.給気ラインの確認
灰受け扉のダイヤルを反時計回りに廻します。炉床下部から1次燃焼用の空気をたっぷり供給することができます。
灰受け扉のダイヤルから供給されたエアが、炉内のアッシュリップの隙間へとつながるルートなんです。
エアーカーテンとなって炉内に流入する1次燃焼用給気レバーです。
右が閉。
左が開。
操作は付属のハンドルで行います。
5.着火
ライトバグ(1粒)に着火。
この着火材は自然素材だけでできた環境にやさしい着火材。
うん。いい感じ。
扉を閉めて、火が廻るのを待ちましょう。
6.燃焼中
10分もすると瞬く間に大きな火炎になりました。
ちょっと火炎をしぼりたいので、灰受け部の給気ダイヤルを絞ります。
時計回りに廻します。熱いので、皮手袋をして操作して下さいね。
下部給気ダイヤルは閉。
上部エアーカーテンルートは開です。
鋳物の本体をどんどん温めてあげます。目標天板250℃~300℃を目指します。
30分~もすると、ドブレ700SLは順調に焚きつけ作業が完了し、最高のコンディションにできあがりました。
7.薪の追加
さらに長時間あたたまりたいので、とっておきの薪をいれてみますね。
その前に、扉を開けて、炉床をならしておきましょう。
□ここで不思議に思いませんか?
なんで、右の側面扉があるのに、わざわざ正面扉を開けてるの?
それに、煙や火が漏れ出してこないの?
□お答えします。
ここが、ドブレ700SLの設計の面白いところなんです。
サイドローディング(側面薪投入)機構があるにも関わらず、正面扉を大きく開けても ほとんど、煙が室内側に漏れ出てくることがないんです。
理由は、バッフルプレート(煙返し)と煙突に抜けていくための導線、これをスロート部と言いますが、 このスロート部の角度と寸法が絶妙のバランスを保っているからです。
例えば、メトスで開放型の手作り暖炉を設計するときなども、 キャノピーから煙突へ導いていくためのスロート部の角度や寸法については相当神経う重要なポイントなんです。
ドブレ700SLは、密閉式の薪ストーブ(しかもサイドローディング機構付)でありながら、開放型暖炉のDNAも併せ持っているからなんです。
「直径14~15cmΦの真っ直ぐ薪なら、側面からお入れなさい」・・・
「小ぶりな投入口でも十分用が足りるでしょ。」・・・
「ぐにゃぐにゃでコブコブ薪や太薪なら正面からお入れなさい」・・・
「スロート部はちゃんと機能してますから安心してね」・・・
そんなドブレ700SL設計者の声が聞こえてくるようです。
こ~んな薪とかも、こ~んな感じで、不安なく正面から放り込めちゃうんですよ。
8.炉の完成
もう十分に炉ができあがっていますから、みるみる炎がまわっていきますよ。
1次燃焼用の給気はすべて閉めました。
今、燃焼のために加給されている空気は本体背面にある2次燃焼用空気取り入れ口から
バッフルプレートへ自然に加給される微量の空気だけで燃焼している状態です。
巡航運転中です。
エクセレント!
天板部温度は280℃超 南部鉄瓶の湯は沸立っています。
◎ワンポイント情報
ドブレ700SL天板有効スペースはいくつでしょう?
左:南部鉄瓶1.6L195φ 右:Staubココットラウンド220φ
答え W380mm×D180mm
ドブレ700SLの天板は、十分に活用できるのです。
9.ご機嫌に燃焼中
10.最高の炎へ
しばらくすると、こんなブルーの炎が。
燃焼のための加給をほとんど必要とすることなく排出ガスもほとんどありません。
それでいてもっとも高い熱を放出する瞬間です。老境に入った薪の艶姿です。
11.熾火へ
太薪のおかげもあり、5時間経過しました。
まだまだ熾火は元気です。鋳物全体から心地良い遠赤外線が輻射され続けています。
この時の表面温度は約120度です。
12.最高の熾火
この感じ。ピザを焼くには最高の熾き火ですね。
■感想
久しぶりにドブレ700SLと対話しました。
うれしかった。楽しかった。かっこよかった。
いぶし銀の役者さんのような、薪ストーブでした。
薪ストーブの本体価格が30万円台ってのも魅力ですね。
report by メトスナゴヤ ドブレ班 カッパ組
■ドブレ700SL 基本データ
・ベルギー Dovre社製
・最高出力 11.0kw(9,460kcal/h)
・熱効率 75%
・暖房目安 46㎡ (日本ガス機器工業会基準換算)
145㎡ (USA基準換算)
127㎡ (EU基準換算)
・燃焼方法 クリーンバーン方式
・材質 鋳物
・扉 正面(開口W510mm×H255mm)
右側(開口W200mm×H220mm)
・炉内 W500×D280mm×H300mm(中心部)
耐火レンガ(バーミキュライト)装備
・薪最長 50cm超
・窓 窓ガラス部有効 W470mm×H230(中心部)
・背面 リアヒートシールド標準装備
・給気 室内給気方式(外気取り入れ機能無し)
・天板 天板部シングル構造 天板部 平均到達温度帯 200℃~300℃
天板 平面部 W380mm×D180mm (記事参照)
・灰受け 灰受けトレイ寸法
W230mm×D270mm×H50mm
・本体寸法 W705mm×D490mm×H710mm(なで肩部H670mm)
・重量 175kg
・煙突径 150φ
・接続 上部取り出し又は背面取り出し
・色 ドブレブラック
・価格 ¥375,000(税抜)
※価格はすべて税別です