林は囃す

林は囃す

イチョウ、サクラ、ケヤキ、ハナミズキ、トウカエデ、クスノキ、モミジバフウ、ナナカマド、プラタナス、カエデ。街路樹に使われている木のベストテンである。全国の街路樹は約667万本、その半分近くをこれら十種が占めている。

奈良時代に、旅人が木陰で休むことができ、なった実で飢えをしのげるようにと植えられたのが街路樹のはじまりといわれている。江戸時代には、東海道,中山道、日光街道など江戸から各地に通じる街道がつくられ、日光杉並木のようなマツ、スギ、ケヤキなどの並木が整備されるようになった。西欧に追いつくための近代化を進める明治時代には、都市づくりとともに街路樹も植えられ、現在のもととなっている。時代とともに選ばれる樹種にも変化があり、第二次世界大戦後には復興のため成長の早いプラタナスが選ばれ、いまでは大阪御堂筋に代表されるようにイチョウの人気が高い。水分を多く含み燃えにくいことが大きな理由らしい。ただそれらはすべて人の手により植えられたものである。中島みゆきも「街路樹」のなかで、「そこで生まれたものはいない」と都会の街路樹を唄っている。

人の手といえば、雑木林もそうである。国木田独歩が「木はおもに楢(ナラ)の類いで 冬はことごとく落葉し 春は滴るばかりの新緑萌え出ずる・・・」と風景を描いている武蔵野の雑木林も薪や炭を得るためにコナラやクヌギが植えられたものであり、生活に密着していたものである。元々雑木とは、マツ、スギ、ヒノキ以外の木のことをいい、雑木林は下草刈りや伐採など常に人の手が入らなければ維持することができない。

2011年は国際森林年、木づかいの年である。自然に生えているのが森、人の手が入っているのが林といわれている。林は、生やすという言葉からきており、お祭りのお囃子にも通じている。お囃子は、場を盛り上げ、楽しさを増す。林で伐採された木が薪となり、炎を眺め、楽しむことで豊かさに通じ、多くの人たちが自然のありがたさを感じることができれば、雑木林の下草刈りもすすんでいくのではないだろうか。世の中不景気である、会社での下草刈りは少々心配ではある。

 

著者紹介
著者:岩崎秀明
株式会社メトスが誇る、炎の伝道士。
豊富な知識とこだわりを持って、暖炉および薪ストーブの普及に励んでいる。