個粋導入施設スタッフの生の声を聞きました。

VOICE with

京都府立舞鶴こども療育センター編

2016年4月、移転によるリニューアルを果たした『京都府立舞鶴こども療育センター』。浴室には個粋ジュニアが導入され、施設に入所するこどもたちの入浴に活躍しています。今回は舞鶴こども療育センターの活動や施設についてご紹介すると同時に、入浴に関わるスタッフお二人から個粋ジュニアを使った感想などをうかがいました。

*この記事は、2016年10月公開の記事を再掲載したものです。

京都府立舞鶴こども療育センターとは

控え目な看板は訪れるこどもたちや親御さんを緊張させないためのさりげない配慮。壁面を分節することで住宅的な印象になった建物にも注目。

最初に、個粋ジュニアが導入された「京都府立舞鶴こども療育センター」についてご紹介します。

舞鶴こども療育センターは《身体に障害のある18歳未満のこどもたちを対象とした医療型障害児入所施設(ホームページより抜粋)》。センター理念は《こども一人ひとりの生きる喜びを守り、生きていく勇気を育む》です。施設内では入所サービスの他、外来診療や各種リハビリテーションなどの医療サービス、ショートステイなどの在宅・地域支援サービスも行われています。昭和33年に肢体不自由施設として開設された同施設は、2016年4月、舞鶴地区の中核的医療施設である「舞鶴医療センター」の隣接地に移転。医療との連携をより密にした上で新たな活動をスタートしています。

施設内は1階の「通所・リハゾーン」「診察・検査ゾーン」、2階の「入所ゾーン」「教育ゾーン」に大きく分けられます。

これは、こどもたちの上下水平移動を最小限にするための配置。さらに2階部分は「入所ゾーン=家」「教育ゾーン=まち」「両ゾーンを結ぶ共有ホール=みち」と見立てられていて、入所中のこどもたちが通学する感覚を見につけていけるように配慮されています。

外来施設には、小児科、整形外科、精神科、歯科、各種リハビリテーション、車椅子・補装具制作などの部門が設置されている。

入所ゾーンは、こどもたちの家であり生活の場。そのため温かみがあり和やかな『家庭的な環境』をつくることが意識されている。

浴室には「個粋ジュニア」が。シンプルかつ清潔な浴室の中で、カラフルな椅子やイラストの施されたにぎやかな浴槽がこどもたちを迎える。

尚、ユニークなのは、この施設がグループホーム的なユニットケア(入居者一人ひとりの個性や生活ペースを尊重したケア)のスタイルを取り入れていることです。高齢者施設などと違い、小児でユニットケアを行う施設は熊本のこども療育センターなど、そんなに多くはない。 それでもユニットケアに取り組むのは『こどもたちにより高い社会性・自立性を獲得して欲しい、その手助けをしたい』という思いから。

実際スタッフは、業務の多くをナースステーション内ではなく、こどもたちの側で行っています。
これは業務の効率化より《こどもたちと寄り添ってより多くのケアを行うこと》を優先しているため。
『あくまで主役はこども』という施設スタッフの考えの表れです。

そんな舞鶴こども医療センターに導入された個粋ジュニアが、日々どう役立っているのか。
そしてスタッフの皆さんが個粋ジュニアをどう捉えているのか。早速うかがってみました。

現場インタビュー「どうですか? 個粋ジュニア」

INTERVIEWEE

看護師・浅田さん
舞鶴こども療育センター勤務9年目。療育センターの移転前、移転後を変化をよく知っている。

INTERVIEWEE

看護師・諸山さん
舞鶴こども療育センター勤務1年目。訪問看護の経験あり。

INTERVIEWER

瀬尾卓志(せお・たくし)
1997年〜老健施設で介護福祉士として勤務。2002年〜川崎医療福祉大学でプロダクトデザインを学ぶ。メトス入社後、個粋の開発にも携わり、個粋には人一倍愛着を持っている。

建築家、施設運営者との出会い

瀬尾

諸山さんは以前、高齢者施設で個粋を見ているそうですね。個粋ジュニアを見てどんな印象でしたか?

諸山

こどもの施設なので、カラフルな感じ、かわいらしい感じがあっていいと思いました。あと、リクライニング椅子にもクッションがたくさんついていて、その子にあった形で使えるので、使っているこどもはラクチンだろうなあと思いました。

メッシュマクラとパッドは、こどもの体格や姿勢に合わせて位置や組み合わせの変更が可能(マクラも体格に合わせてサイズ選択可)

瀬尾

浴槽の側面に、こどもさんが好きそうな絵柄を貼っているんですが、あれはどうですか? こどもたちの反応はありますか?

浅田

こういうかわいらしい浴槽、はじめて見たんですけど、こどもの施設だし、こういったとこにも配慮があるのかなと思いました。こどもたちからは何も聞いていないです……(笑)

瀬尾

(笑)。大人の施設でも言えることなんですが、やっぱり浴室にパッと入った時の視覚的な印象って、大事なんです。 例えば高齢者施設だと、檜浴槽だとか、昔入った檜葉(ひば)のお風呂とか、大人っぽい雰囲気を演出します。 それが皆さんに喜ばれる。個粋ジュニアの浴槽も浴室の中で大きな面積を占めるので、あそこで何かやわらげることができたら、と絵柄をつけてみました。何か少しでも現場の手助けになるような、楽しめたり、リラックスしたりできるようなものを……というのが私たちメーカーの思いです。

浅田

雰囲気づくり、大切ですよね。

穏やかな口調でハキハキと答えてくれる浅田さん。施設スタッフとして、長くこどもたちを見つめ、支え続けている。

有り無しで浴室の印象が大きく変わる絵柄(イラストシール)は現在4種類。

こどもに寄り添うこと

瀬尾

(リモコン)操作についてはどうでしたか?

浅田

そもそも機械が得意ではないので(笑)「難しいのかな」と思っていたけれど、使ってみたらそうでもなかったです。 案外ラクに操作ができたな、という感じでした。

瀬尾

椅子を旋回させることについてはどうですか? 最初の印象や、実際感じたことがあれば。

浅田

緊張しやすい子が驚かないかなあと心配したけど、意外と大丈夫でした。 私たちもこどもたちが緊張しないよう、できるだけ離れないように、側に近づいて回すように心がけていますし。離れないことが一番安心するようなので。

瀬尾

ああ、それができるのが旋回式のメリットです。個粋を開発したときに旋回式を採用したのは、入浴者と介助者が常に同じ距離を保てるからなんです。スライド式のお風呂では入浴者と介助者の距離がどうしても離れてしまって、それが入浴者の不安につながることもあります。 やっぱり常に寄り添えることが一番、安心につながるんですね。だから個粋の移乗チェアは、旋回式であり、寄り添い型なんです。その点で、こちらの療育センターのような、こどもに寄り添うことをテーマに掲げた施設と個粋ジュニアは、とても相性が良いんだと思います。

旋回式には常に寄り添いながら移動や介助ができるという大きなメリットがある。

こどもがリラックスして入れるお風呂

瀬尾

入浴しているこどもたちの様子はどうですか?

諸山

緊張しやすい(身体に力の入りやすい)こどもさんもリラックスして入られているので、とてもいいように思います。 押さえつける必要のない感じで、リラックスして入れているのが、いいかなって。

瀬尾

それはうれしいです! 私たちは、お風呂を洗体の場として終わらせず、そこで癒やしを感じて欲しい、くつろいで欲しいという思いで商品づくりをしているので。元々が温浴施設向け商品を扱ってきたメーカーなので、大人向けのくつろぎを提供してきた自負はあるんですが、こどももリラックスしてくれていると聞くとうれしいですね。 ちなみに、個粋ジュニアでの入浴を嫌がっているこどもさんはいますか?

諸山

逆に「もうちょっと入っていたい、まだ浸かっていたい」と泣く子がいますよ。湯船から椅子が上がるときに怒ったり、泣いたりとか。

瀬尾

ありがとうございます!

医療スタッフ・諸山さん。細やかで優しい視点から、こども好きであることが感じられる。

ベルトへの抵抗は?

瀬尾

個粋ジュニアでは姿勢保持を助けるためのベルトを採用していますが、ベルトをつけて入浴することに、こどもの抵抗はありますか?

浅田

ないですね。車いすとかでも「座ったらベルト」とかなので、座ってベルト、ってことに抵抗はないのかもしれないです。 ただ、(一度お湯の染みたベルトが冷えて)冷たいベルトが身体にくっつくと、びっくりしちゃうかもしれない。 だから、ベルトにお湯をかけながら身体に当てるようにしています。

瀬尾

なるほど。確かに二人目、三人目になると、ベルトが冷たく感じられることがありますね。お湯をかけていただくのはいい方法だと思います。あとは、ベルトと身体の間に一枚タオルを入れていただくのも手ですね。冷たさが緩和されます。

浅田

なるほど! やってみます。

瀬尾

最後の質問です。今回、移転リニューアルに合わせて個粋ジュニアが導入されていますが、それで変化したことはありますか? 介助負担など、どうですか?

浅田

介助が、とても楽になりました。以前はビニールプール(家庭などで使う、縁を空気で膨らませて中に水を貯めるもの)と寝台浴(機械浴)を使っていたんですが、どれも二人がかりの介助が必要で。しかも浴槽の中に(こどもを)中腰になって入れていたので、結構というか、本当に大変だったんです。

瀬尾

ちなみに以前ビニールプールを使っていた理由を教えてもらえますか?

浅田

ビニールプールは、やわらかいので。ストレッチャーや固い浴槽では、手足が当たったりしてケガにつながるこどもさんも、ビニールプールなら当たっても大丈夫だったりします。 それでプールで入れるこどもが多かったんです。 でも、こどもの身体が大きくなると、入れるのにも抱えて入れなくちゃいけないし、入っている間もしっかり支えていなくちゃいけなくて。 首や腕とか、身体の一部をどこか持ってないといけない。 浮力があるとはいえ、支えるのには非常にチカラが要りました。

瀬尾

その介助だと、体力的にキツイのはもちろん、気が休まるところがないですよね。離してしまうと、お湯の中に沈んでしまうわけですし。

諸山

はい。だから個粋ジュニアが入ったことで、支える労力が減って。 椅子に座ったままお湯に浸けてあげられるから、こどもをキュッと支えなくてもよくなったし。 それで、こどももリラックスして入れるのかなあ、と思います。

瀬尾

よかったです。ちなみに、いまは一人で介助を?

諸山

はい。もちろん、体が大き過ぎたり、座位保持が難しかったり、どうしても二人がかりの移乗介助が必要な場合は寝たまま入れるストレッチャー(寝台浴)で入れることもあります。でも、個粋があればスタッフ1人で入れられるので。

瀬尾

個粋ジュニアが介助量軽減やこどもさんたちのリラックスにつながり、お役に立っているようで何よりです。 今日はお忙しい中いろいろお話しいただき、ありがとうございました!

「一緒に暮らしていける場所づくり」

新しくなった舞鶴こども療育センターに入って、まず驚いたのは建物でした。モダンなのに安心を感じる家のような外観、光の取り入れ方や近隣の住宅との違和感のなさ、それに加えて建物内がまるで小さな街のように考えられていたことです。建物内を少し歩くだけで、家のようにくつろげる空気を感じました。

また、こども療育センターで働かれている人たちのチャレンジ精神にも驚きました。建物内に入ってみると、入居されている方達の近くの机で何かの仕事をされている看護師さんがいました。普通の病院ならナースステーションの中でされているような仕事を、看護師の方が入居者の人たちに近い位置で仕事をされている姿がまぶしかったです。

看護師の方に限らず、みなさん専門的な教育機関で勉強され、実際に病院でのキャリアも長いスタッフの方達が新しいワークスタイルで働くことには色々な苦労もあったと思います。しかし、今回の訪問ではスタッフの人たちも入居者の人たちもまるで一緒に暮らしているような雰囲気でした。理念に基づいた住環境と、それに寄り添うスタッフの方達あってこそ、このような場所が運営できているのでしょう。 個粋ジュニアがスタッフや入居者の方に役立ってくれている様子を見て、これからも個粋シリーズの改良と開発、そして普及を続けていこうと強く感じた訪問でした。

施設情報

施設情報

名称/国家公務員救済組合連合会 京都府立舞鶴こども療育センター
住所/〒625-0052京都府舞鶴市行永2410番地37
   (舞鶴医療センター南側隣接地)
電話/0773-63-4865
交通/JR舞鶴線東舞鶴駅より車で約10分
   (京都交通バス 三宅団地前下車約300m)
<ホームページ>http://maizuru-ryouiku.jp