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Sauna on Valmis! サウナ発祥の地、フィンランドの今を現地からリポート!


 スモークサウナがキング・オブ・サウナと呼ばれる理由とは?

2015年秋のフィンランドは、例年以上に大規模なオーロラが何度も発生し、話題を呼んでいます。オーロラは、出現していてもラップランド(北極圏)くらい北でないとはっきり見えないもの、というのが定説でしたが、最近は私が住む中部地方どころか、ヘルシンキなど南岸のほうでもうっすら確認できるほどの巨大で力強いオーロラがたびたび現れているのです!これからのオーロラ本番の季節が今から楽しみですね。

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

サウナ界のキングとして崇められるスモークサウナ。ピーク時の温度でも決して熱すぎず、何より煤けた木の空間いっぱいに立ち込めるスモーキーな香りに身も心も清められ、癒される

さて、Sauna on valmisではこれまでも、コテージ生活からビジネスシーンまで、暮らしのあらゆる場面と結びつく多様なサウナをご紹介してきました。ですがこれらはすべて、現代的なフィンランド人の生活のスタイルやニーズに応える形で生まれてきた、比較的新しいサウナ文化の一面にすぎません。それに対して、実はフィンランドのサウナ界には、今も昔も「キング・オブ・サウナ」として称えられる、はるか長い歴史をもった不動のサウナが存在します。それこそが、スモークサウナ。フィンランド語ではSavusauna(サヴサウナ)と呼ばれ、もっとも原始的にして究極といえる室内加熱のしくみを備えたサウナのことです。

スモークサウナならではの、サウナ室内を暖めるしくみと作業

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

サウナ室が十分に暖かくなるまでには、とにかく何度も断続的に新しい薪をくべないといけない。このサウナを所有する家族は、家族同士であと何時間後に何度薪炊きが残っているかの情報を共有するために、そろばんのような器具を活用している

サウナストーンの乗ったストーブ釜に薪をくべて室内と石を暖める…という点では、スモークサウナの原理は、湖畔サウナの定番である薪ストーブサウナと同じです。ところが、スモークサウナにはなんと煙突がありません。薪を燃やせば当然ながら煙がもくもく吐き出されますが、行き場のない煙は、どんどんサウナ室内に充満していきます。その場に人がうっかり閉じ込められたら…煙にむせるどころか、一酸化炭素中毒で倒れる危険性だってあります。つまり、ロウリュを浴びながら適宜新しい薪をくべていく薪ストーブサウナとは違って、薪を燃焼中のスモークサウナはまだ入室NG。スモークサウナが準備完了となるのは、サウナストーブや部屋全体を暖めるのに十分な薪を燃やしきって、かつ滞留した煙を、煙突代わりに壁の隅などに開けられた小さな通気口からすべて逃がしきった状態のときです。

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

サウナストーブがとても大きいのがスモークサウナの特徴のひとつ。保温効果抜群なので、サウナ室を何十人と入れるほどに拡張することもできる

この「準備完了」モードになるまでには、実に7~8時間、絶えず薪をくべ続けなければなりません。しかも、通気口から煙を逃がしすぎても室温が下がるし、サウナ室内を適正温度かつ身体に無害な状態に落ち着かせるには、膨大な時間とテクニックが必要となるのです。その代わり、しっかり暖まりきったサウナ室は、重厚なログ造りの壁と一際大きなサウナストーブのおかげで、その後何時間ものあいだ(場合によっては半日以上)、新しい薪を投入せずとも十分な保温状態が続きます。かつて、このように大きなサウナストーブを持ったスモークサウナ小屋は生活の場のひとつでもあり、サウナ浴以外の時間も暖をとったり食物を燻したり、寝泊りすることもあったのだそうですよ。

それにしても、どうしてそんなにも手間と技術を要する原始的なサウナが、今日までキングの座に君臨し続け、崇められているのか…私自身も内心ずっと不思議に思っていました。けれど、さまざまなフィンランド人にこの問いかけを続けているうち、今や珍しくなったスモークサウナを楽しむということは、①歴史ロマンであり、②(スモークサウナをじっくり温められるほどの)時間的・精神的ゆとりへの満悦であり、③他の現代的なサウナでは得られない特別な快感を味わえる場である…というのが、その主な所以であることがわかってきました。ではそれぞれの理由について、もう少し深く解説していきましょう。

スモークサウナは、サウナの歴史の原点である

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

先日メトスの皆さんとエストニア南部のヴォル地方へ取材に訪れたときに見せていただいた、今も現役として活躍する地中サウナ。建物の半分が地中に埋まっており、空間密閉や建材の節約に適っている。フィンランドにもかつてはあった古式スモークサウナのひとつ

サウナの歴史は軽く紀元前にさかのぼるといわれています。にもかかわらず、1900年代に、薪の燃焼によって排出される煙を煙突からうまく逃がすサウナストーブや、そもそも煙の出ない電気サウナストーブの設置が主流となるまでは、どこまでさかのぼってもいわゆるスモークサウナしかありませんでした。だからむしろ、長い歴史の中ではスモークサウナこそがサウナの原点であり、スタンダードであったわけです。もちろん一口にスモークサウナといっても、その中にさまざまな様式や規模のものがあります。地域や年代によって、例えば地中に埋まったタイプや二階建て式のサウナ小屋などが生み出されてきました。

フィンランド国内でスモークサウナの数がピークを迎えたのは1910年ごろ。けれどその後、煙突と連動した新しいサウナストーブの普及によって公衆サウナ、コテージサウナ、そして自家サウナの数が急増すると同時に、スモークサウナはあっという間に影を潜めてしまいました。今では、田舎地方の古い集落や一部のサマーコテージ、野外博物館、そして限られた公共施設でしかお目にかかれません。でもだからこそ、そこに歴史ロマンや伝統への敬意を感じ、「あえて」今でもスモークサウナを選択する人も少なからずいるのです。

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

建築家アルヴァ・アールトが自身のサマーコテージのそばに自ら建てたスモークサウナ。一見伝統的な工法に忠実に作っているようだが、材木の両端の太さの違いを利用して、奥にも上にも空間が末広がりになるよう、綿密に設計され組み上げられている

例えばフィンランド屈指の建築家、アルヴァ・アールトが1950年代に自ら設計して建てた自身のサマーコテージのサウナ小屋も、当時すでにマイノリティとなっていたスモークサウナです。彼は人生をかけてモダン建築を追及しながらも、同時にその土地の風土や暮らしや伝統をないがしろにしない、という信念を持ち続けていました。だからこそ、アールトが自分のために建てたサウナも、形状はかなりモダンですが、その基本工法やストーブの様式にはあえて昔ながらの知恵と工夫を取り込み、積極的に継承しようとしたのかもしれません。

スモークサウナが暖まるのを待つのは贅沢なこと?

サウナ・オン・ヴァルミス!写真先に述べたように、スモークサウナを暖めるにはとにかく時間と燃料が要るし、焦って排煙不十分だと身体に悪影響を及ぼす…というリスクがあり、それゆえ、(フィンランド人といえども)忙しない現代的な暮らしのなかで淘汰されていきました。けれど裏を返せば、半日がかりでじっくり薪を燃やし続け、スモークサウナが十分に暖まるまでの時間を、母屋や庭でのんびり「待ち続けられる」時間的・精神的なゆとりがあるって、慌しい日々の生活リズムの対極にある贅沢ではないでしょうか。家族でかわりばんこに薪を追加しに行ったり、室内のスモークを利用して肉や魚の燻製を作ったり、せっかくスモークサウナを暖めたのだから…と知人やご近所さんも誘ったり…スモークサウナという場を中心に、自然とコミュニケーションも広がります。普段はそんな余裕に浸る機会が少ないからこそ、心の豊さの象徴ともいえるスモークサウナを楽しむ一連の行為自体に、現代人はいっそうの憧れとノスタルジーを抱くのかもしれません。

広々としたスモークサウナは家族や知人、訪問客との和やかな交流の場。突然の来客用のタオルやサウナハットも普段からきちんと用意してくれている


やっぱり心地よさでスモークサウナに敵うサウナなし!

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

先に紹介したアールトの所有していたスモークサウナの眼の前の湖畔に浮かぶ桟橋。やっぱりサウナ浴のあとは天然クールダウンです!

スモークサウナを体験したことのある人は皆、口をそろえて言います。「やっぱりスモークサウナが一番気持ちいいし、体が暖まるんだ」と。長時間薪を燃やし続けて準備の整ったサウナ室は、あとはもうそれ以上薪をくべずとも、その後さらにかなり長い間、60~80度ほどの程よい温熱空間を維持していられます。日本では、サウナと聞けばもう少し高温の部屋を想像されるかもしれません。サウナ室は、高温であるほどすぐに体を温められそうなものですが、実は熱いほど皮膚や呼吸器への刺激が強く、結果的に長く座っていられないという一面もあります。スモークサウナは、じっくりと腰を落ち着け、頻繁にロウリュの蒸気を浴びて時間をかけてリラックスするうちに、まさに体を芯まで暖めてくれます。しかも、なぜか電気ストーブのロウリュより断然湯冷めしにくい!日本のお風呂屋さんに通ったことのある人なら、今日主流のガス炊きのお風呂と貴重な薪炊きのお風呂とを比較して、やはり同じような違いに気づきますよね。

またスモークサウナでは、その名のとおりスモークの天然アロマを楽しめます。長年使われているスモークサウナでは壁やベンチが真っ黒に煤けていて、もたれると体にもススがついてしまうのはご愛嬌。丸太の表面が燻された香ばしいにおいは、どこかノスタルジックで、しかも疲労回復を促してくれます。また、時間をかけて煙を外にやり、熱気と薫香だけが残った空間は滅菌という意味でも実は極めて清潔で衛生的な空間でもあるのです。こうしたスモークサウナでしか味わえない上質の快楽を知っている人は、やはりここぞというときの勝負サウナにスモークを選ぶのでしょうね。

ヘルシンキ近郊にも、ツーリストが体験できるスモークサウナがあります!

Sauna on Valmis! サウナ フィンランド

ツーリストでも水着を持って行けば気軽に楽しめるクーシヤルヴィのスモークサウナ。地元の人のサウナ浴のハウツーを観察しながら、見よう見まねで楽しんでみて!

ここまでスモークサウナを持ち上げておいても、百聞は一見にしかずで、やはり実際に体験してみるまでは納得もできないでしょう。フィンランド国内でもその数は激減しているスモークサウナですが、逆にその価値を公共の場で見直す動きもあり、最近ではなんと市民や旅行者が手軽に体験できる場所も少なからずあります。その代表格は、ヘルシンキ中央駅からバスで30分で行けるヴァンター市の国立公園のそばにあるクーシヤルヴィというアウトドア型公衆サウナ。併設カフェにある窓口で料金を支払い鍵とチケットバンドを受け取れば、湖畔に建てられた大きなスモークサウナを自由に利用できます。サウナ浴後は目の前の湖で泳ぐこともできますよ!詳しくはメトス・サウナ特設ページの訪問記をご覧ください。

また、来年2016年春には、ヘルシンキの海沿いにスモークサウナを楽しめる新しい公共サウナ施設がオープン予定!こちらはオープン次第また現地レポートいたしますので、乞うご期待です。

 



 

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こばやしあやな

筆者/こばやしあやな

フィンランドのユヴァスキュラ大学大学院に在籍し、芸術教育学を学ぶかたわらで、ライター、ガイド、翻訳・通訳などをおこなうフリーランサー。All Aboutフィンランドガイドを務めるほか、文化情報誌などに取材文やエッセーを多数寄稿する。甲斐甲斐しくて情報通で、愛され上手な「大阪のおばちゃん=おかん」が人生のお手本。在京時代に日々都内の銭湯巡りに勤しんでいたフットワークと経験を生かし、現在はフィンランドサウナ、とりわけ公衆サウナ文化に関心を寄せて、比較研究に取り組んでいる。

公式ウェブサイト: Suomiのおかん こばやしあやな
公式ブログ: Suomiのおかんの湖畔会議
公式Facebookページ: Suomiのおかん こばやしあやな

* このページに使用されている写真の権利は、こばやしあやなに所属します。

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